「最近の若手は受け身だ」「部下に積極性や主体性を持たせたいが、どうしたらいいかわからない」といった、経営者や管理職の方の声を聞くことがあります。その人のもともとの性格だから変えられないと諦めている人もいるようですが、本当にそうなのでしょうか?
今回は、上司と部下のコミュニケーションを専門としている、佐賀県よろず支援拠点コーディネーターの北村朱里が、受け身な部下を変えるために上司ができることを解説します。特別なことをしなくても、日常業務の中で少しずつ部下を変えることはできるのです!
まず受け身になっている理由を把握する
受け身な態度を取る部下、自分から意見を言わない部下を「積極性がない」「やる気がない」と思い込んではいませんか? また「最近の若者は受け身だ」と一括りにしていないでしょうか。確かにそういった傾向はあるかもしれませんが、受け身になる理由は人によって異なり、それによって対処法も異なります。まずは、受け身になる理由にどのようなものが考えられるかをみていきましょう。
その発想がない
自ら能動的に言動すべきだという発想そのものがなく、必要性に気付いていないケースです。これは社会経験が少ない新卒や若手には意外と見受けられます。この場合は必要性を伝えるだけで改善することがほとんどなので、比較的早く解決が見込めます。
やり方がわからない
必要性は理解しているにも関わらず受け身の態度が変わらない場合には、自ら能動的に言動する方法がわからないという可能性があります。これもやり方を教えてあげることで改善するため、解決はそれほど難しくありません。
心理的に抵抗がある
必要性も理解しており、やり方もわかっているはずなのにできない場合は、何らかの心理的な抵抗を抱えていると考えられます。例えば、過去に自分の判断で行動して失敗したり叱られたりした経験があるといったことです。これを解決するには「あなたは自ら能動的に言動して大丈夫ですよ」「会社はむしろそれを歓迎していますよ」ということを根気よく伝え続けるしかありません。時間がかかりますが、続けていれば成果は見込めます。
日常でできる!受け身な部下を変える方法5選
部下の育成のためにしっかりと時間や労力を割くことができる場合、上記の理由のいずれかに当てはまるという仮説を立てたうえでPDCAを回していけるのが理想です。しかし、なかなかそこまでの余裕がない上司の方も多いと思います。そこで今回は、日常業務の中で今すぐできる方法を紹介します。
1.意見を言う場をつくる
部下が「自分から意見を言おう」という発想そのものを持っていない場合、上司の方から意見を言う場を提供することから始めましょう。それでは受け身と変わらないと思われるかもしれませんが、まずは意見を言うという「体験」をさせてみないことには能動的な言動にもつながらないからです。
場づくりといっても、大掛かりなことをする必要はありません。日常業務の中で、部下に意見を尋ねてみるだけでよいのです。はじめは簡単な事柄にするとハードルが下がります。それでもすぐに言えない部下には「このことについて明日の○時頃に尋ねるから、意見を聴かせてください」「○日にはこの紙に意見を書いて提出してほしい」のように、方法と日時を指定し、なおかつ考える猶予を与えると良いでしょう。意見を言う習慣とともに、考える力が身に付くことも期待できます。
2.理由や目的を伝える
自ら行動すべき必要性を理解していない部下には、日常業務の中で指示をする際「なぜその行動が必要なのか」「どんな目的があるのか」をセットで伝えることも大切です。はじめのうちは言われた通りにやることしかできなくても、伝え続けていけば徐々に本質を理解でき、最終的には目的を伝えるだけでも自らやり方を考え行動できる人材になっていけるでしょう。
3.形式化する
能動的に言動する方法がわからない部下には、やり方をできるだけ形式化してあげることが有効です。例えば「自分から進んで仕事を探してください」という曖昧な言い方ではなく「今やっている仕事が終わったら『次にできることはありますか?』と私に聞いてください」というふうに「いつ誰に何と言うのか」を明確に指定するのです。こうした形式的な指示が足がかりとなって、徐々に自分の考えで言動できるようになっていきます。
4.感情を伝える
自ら進んで発言することに心理的な抵抗を抱えている部下に対して、命令口調や強制するような言い方は逆効果です。過度に緊張したり委縮したりした状態では、良い意見も思い浮かばなくなってしまいます。
重要なのは、意見を言わせるための指示をするのではなく「あなたの意見を聴かせてくれたら嬉しいな」「考えを言ってくれたら私はとても助かる」のように上司のポジティブな感情を伝えることです。そうすることで部下の中に、自ら進んで発言することに対する心理的安全性が生まれます。「自分の発言が上司の役に立つんだ、喜ばれるんだ」ということに気付いてもらうのが重要なのです。
5.大歓迎する
意見を言っても否定されるのではないかという不安を持っている部下に効くのは、言ってくれた意見をとにかく大歓迎することです。まずは「言ってくれてありがとう!」「それはいい考えだね!」のように肯定の意志をその場で伝えましょう。少々大げさなくらいがちょうど良いです。そして、その意見が実際の業務に役立つようなことがあれば「あなたの意見がこんなふうに役立ったよ!」「おかげでお客さまにも喜ばれた!」ということも伝えるのです。このように自ら考えて意見を言うことの成功体験を積み上げてもらうことで、時間はかかりますが確実に心理的抵抗は払拭されていきます。
もし部下が発言した内容が間違っていた場合でも、すぐに否定や訂正はしないでください。まずは「言ってくれたこと」そのものを褒め、感謝の気持ちを伝えましょう。内容の訂正はその後でも決して遅くありません。発言したこととその内容を切り分けて考えるのがポイントです。
最後に
受け身な態度の部下に「積極的になってください」と言ったところで変わることはありません。むしろ「そんなこと言われたって…」とモヤモヤが募り、上司への不信感が大きくなります。大事なのは、今回お伝えしたようなことを日々コツコツ続けること。一度や二度で何も変わらないように思えたとしても、数か月後、一年後には「そういえばだいぶ変わったな」と実感できる日が来るはずです。その頃には部下が主体的になっているだけでなく、上司であるあなたと部下との信頼関係も強くなっていることでしょう。
今回お伝えしたようなこと以外にも「社員とのコミュニケーションに悩みがある」という経営者の方がいらっしゃいましたら、佐賀県よろず支援拠点へお気軽にご連絡ください! 国が運営している機関のため、相談は何度でも無料です。
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