「退職したい」と部下に言われたら? やってはいけないこと、やるべきこと

部下から「退職したい」と言われると、経営者や管理職の方は少なからず動揺するものだと思います。簡単にやめないでほしい、辞めるにしてもできるだけ他の社員に悪影響を与えないでほしい、といったことが頭に浮かぶのも無理もありません。では、そのためにはどうすればよいのでしょうか。

今回は、上司と部下のコミュニケーションを専門としている、佐賀県よろず支援拠点コーディネーターの北村朱里が、部下から退職したいと言われた時にやってはいけないこと・やるべきことを解説します。上司の対応次第で、その後の結果は大きく変わってくるのです。

この記事の概要

やってはいけないこと

部下から退職の意志を打ち明けられた時、絶対してはいけないのが、詳しく話を聞かずにすぐ引き留めることです。「辞めないでほしい」とはっきり言葉にするのはもちろん「なぜ辞めたいの?」と引き留める前提で理由を聞くこともNGと考えてください。

上司にこのような反応をされると、部下は「この人は自分の気持ちをわかろうとしてくれない」「上司としての自身の立場を守ることしか考えていない」と感じ、心を閉ざしてしまうからです。私が以前に相談を受けたある管理職の方は「部下が辞めたい理由を話してくれない。それでは引き留められないから困る」と言っていました。一方、退職を希望している部下の方に話を聞くと「何を言ってもこちらの意向を汲まずに引き留めようとしてくるから、何も言う気がなくなった」と、さらに辞意を強固にしていました。これでは完全に逆効果ですね。

上司として、引き留めたい気持ちは痛いほどわかります。ですが、それをグッとこらえてまずは相手の心情や状況を理解することに集中しましょう

面談でやるべきこと3つ

部下に辞意を告げられたら、1対1で話をする場を設けましょう。この時、単に「面談します」と言うだけでは部下が構えてしまいますので、伝え方に工夫が必要です。まずは「そうか、辞めたいんだね。話してくれてありがとう」と、意思を受け止めた旨と感謝の気持ちを伝えてください。その上で「よかったら〇〇さんの考えを聞かせてほしいので」と言って面談の日時を設定します。「自分が話したい」ではなく「あなたの話を聞きたい」という理由付けをすることで、引き留められることへの恐れをいくぶん緩和できるのです。面談の中で信頼関係を築くためのポイントは、以下の3点です。

1.「なぜ」ではなく「いつ」を尋ねる

辞めたい理由を尋ねるのは逆効果だと前述しました。慰留されることを警戒して本音を言うのを避けられることはもちろん、辞めたい理由を本人もうまく言語化できていないケースもあるからです。

そこでおすすめなのが「ちなみに、いつ頃から辞めたいと思っていたのですか?」と聞いてみること。本人の気持ちをいったん受け止めつつ、その気持ちが発生した時点から現在までの経緯を知るためです。時期を答えてくれたら、その時どんな出来事があったのか、どんなことを思ったのか、丁寧に掘り下げていきましょう。そうすることで真の理由やきっかけが見えてくるはずです。また、そこで見つかった課題を解決することで、退職を回避できる可能性が見えてくるかもしれません。

ただし、すぐに解決方法を提案してはまた警戒される恐れがありますので、ここではあくまでも相手の理解と情報収集に特化しておきましょう

 2.人として話を聞く

前述したことにもつながりますが、面談中に少しでもあなたの「上司としての立場」が顔をのぞかせることで、部下は話す意欲をなくしてしまいます。面談を始める際、まずはあなた自身が上司という立場を横に置き、何者でもないひとりの人として相手と向き合うことが重要です。部下は会社を去るつもりでいるわけですから、上司は「まもなく関係なくなる存在」に過ぎません。しかし、立場に関係なく人としての交流を少しでも持てた相手となると、その限りではなくなります。大切な家族や友人の悩みを聞くように、解決することよりも相手の心情を理解することをゴールと考えて親身になりましょう

話を聞く際のポイントは、否定的な返答や意見を挟まず、肯定的に受け止める相槌を意識的に行うことです。たとえ会社として肯定しがたい内容だったとしても、まずは一個人の気持ちとして受け止めましょう。例えば「明日からもう出社しません」と言われた場合、当然会社としてそれをすぐ受容するわけにはいきませんが「そうか、〇〇さんは今そう感じているんだね」といったようにひとつの感情として受け止めるのです。そのほかNG・Goodの例は下記を参照してください。

退職面談の相槌NG・Good例
NG
・「それは違うんじゃないかな」(否定)
・「そういう時は〇〇したほうが良かったと思う」(意見)
・「会社としてそれは困る」(上司の立場で対応する)

Good
・「なるほど、そういう気持ちになったんだね」(感情の受け止め)
・「それは辛かったですね」(感情の理解)
・「〇〇さんはそう思ったんだね」(人として話を聞く)

3.結論は本人に任せる

 ひと通り話を聞いたうえで、それでも退職の意志は変わらないのか、もしくは思いとどまる余地があるのか。それはあくまでも本人の決断に任せましょう。ここであなたの役割として重要なのは、引き留めることではなく、退職を促すことでもなく「本人が自分の意志で後悔のない選択ができるようサポートをすること」です。

「改めて、今の気持ちってどういう感じですか?」「辞めるか辞めないかの二者択一でなく、迷っている気持ちを言ってもいいのですよ」「今すぐ決めなくても大丈夫ですよ」というように、結論を急がせないようにしながらも正直な今の気持ちを話しやすいように導いていきます。迷いが払拭されないようであれば「では、〇日後にまたお話しましょうか。その時どんな結論でも、まだ迷っていても大丈夫ですからね」などと伝え、相手の心理的安全性の確保に努めます。

大事なことなので繰り返しますが、決して引き留めようと焦ってはいけません。あなたが焦るほど、部下も辞めることを急ぎたくなります。どんな気持ちや結果も受け止めますよ、といった堂々とした態度を貫いてください。あなたがゆったりと構えていた方が、部下も「今すぐ辞めなくてもいいかもしれないな」という気持ちにもなりやすくなるものです。

どれほど誠心誠意の対応をしても、結果として退職の意志が変わらないこともあるでしょう。しかしそれでも「信頼関係を築くことに失敗した」とがっかりする必要はありません。辞めた社員と現役の社員は意外とつながっているもの。あなたの誠実な対応が「良い噂」となって現役社員たちの耳にも届き、今後の関係性に多少なりともプラスになるはずです。大切なのは目の前の一人を引き留めることではなく、部下たちと人として息の長い信頼関係を構築することです。

最後に

部下の退職は、経営者や管理職であれば誰もが経験する、避けては通れないことです。実際にそのようなことがあった場合は、ピンチをチャンスと捉え、信頼関係を築くことや組織を良くすることに生かしてやろうというくらいの気持ちで前向きに取り組んでみてください。

今回お伝えしたようなこと以外にも「社員とのコミュニケーションに悩みがある」という経営者の方がいらっしゃいましたら、佐賀県よろず支援拠点へお気軽にご連絡ください! 国が運営している機関のため、相談は何度でも無料です。

詳しいご利用案内はコチラから
https://yorozu-saga.go.jp/yorozu

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