事業の経験が浅かったり、借入をしたことがないと、「借金は悪いこと」「借入は怖い」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、事業主としては、適切な資金調達をしていくことでむしろ事業の成長と安定をさせていくことができる「とても役に立つもの」と言えます。
この記事では、その理由をお伝えしていきます。
1. なぜ「借金は悪いこと」というイメージがあるのか?
「借金は悪い」というイメージは、逆にいうと、「自己資金だけでの事業運営が良いこと」ということです。自己資金が不足すれば、家族やコミュニティからの援助を頼ることが一般的であり、借金は最後の手段というわけです。
また、メディアや映画などで描かれる借金のイメージも影響するかもしれません。多くの場合、借金は破産やトラブルと結びつけられ、負の側面が強調されることも多いです。これらより、借金に対するネガティブな認識が広がりやすいのです。
しかし、実際には事業運営においては、借入は重要な役割を担います。
2. 借入をするメリット:事業拡大と運転資金の確保
適切な借入は、特に、事業拡大と運転資金の確保において大きなメリットがあります。
事業拡大のための借入
事業拡大においては、新しい市場への参入や製品ラインの拡充、設備投資などが必要になります。これらの活動には多額の資金が必要ですが、自己資金だけではすぐに対応できない場合が多いです。
しかし、そうしたビジネスチャンスがあることが分かっていながら、自己資金を積み上げる、つまり毎期の利益(キャッシュフロー)を積み上げて、お金が貯まったらそうした事業投資をしていこう、という発想は、現代のビジネスのスピード感とはマッチしないことが多いです。
そこで、銀行借入が役立ちます。適切な借入れを行うことで、事業拡大に必要な資金を迅速に確保し、競争力を高めることができます。
運転資金確保のための借入
運転資金の確保は事業の安定的な運営において重要なポイントです。
運転資金は日常のビジネス運営に欠かせないものであり、仕入れや給与支払い、日常的な経費の支払いに使われます。
月末に、支払いのために入金を待っている姿を想像してみてください。そうした緊張感のある時間は、事業主の貴重な時間を奪うだけでなく、精神的にも不安定になり、近視眼的にさせてしまうものです。
また、事業が成長する過程で、そうした収支ギャップというのは増加しがちです。(売上が増えると先行して仕入れが増えるため)。
資金調達により、キャッシュフローを安定させ、事業の継続性を確保することができます。
金融機関からの応援も
さらに、資金調達を通じて金融機関との信頼関係を築くことも可能です。定期的に借入れと返済を行うことで、信用力を高めることができ、将来的な大規模な資金調達が必要な際にもスムーズに対応できるようになります。
また、銀行や信用金庫といった金融機関は、融資残高のある取引先に対しては付帯的なサービス・情報提供がある場合も多く、事業を有利に運営していくことにもつながります。
3. 借入のリスクをコントロールする方法
メリットは分かるが、やはりリスクを感じて借入に踏み切れない場合もあるでしょう。そうしたリスクはしっかりとコントロールする手段がありますので、こちらでご紹介していきます。
資金繰り表の作成(将来の資金計画を立てる)
借入れを行う際には、返済計画を立てていることと思いますが、そうした見込み通りにいくことは(良い意味でも悪い意味でも)少ないです。
しっかりと資金繰り表を作成し、事業の状況の変化に応じて、6ヶ月程度先の資金状況についてはアタリをつけておくことが重要です。
金融機関と定期的なコンタクトをとる
資金繰り表を作成したら、金融機関とは定期的にコンタクトをとっていきましょう。
状況によっては、金融機関側から追加の融資の提案が来ることもありますし、逆に返済が厳しいという見通しが早めに立てば、リスケジュール(融資の条件変更)をはじめとする各種支援を検討してくれることもあります。
経営者保証なしの融資制度を利用する(法人の場合)
借入のリスクとして、法人だけでなく、個人の資産まで売却して返済しなければならない、という懸念が挙げられます。
しかし、本来的には法人での借入の返済は法人が倒産すれば個人には遡及しません。
伝統的には「経営者保証」という形で代表者が連帯保証をすることが通例だったため、法人の借金は代表者の借金でもあったわけですが、昨今は経営者保証の解除、経営者保証無しの融資が広がっています。
5. 銀行との良好な関係を築く:信頼を得るためのポイント
銀行との良好な関係を築くことは、経営者にとって非常に重要です。信頼関係が確立されることで、必要なときに適切な資金調達が可能となり、ビジネスの安定と成長を支えることができます。
では、具体的にどのようにして銀行との信頼関係を築けばよいのでしょうか?
情報を適切に提供する
金融機関に対して自社の財務状況や事業計画を正直かつ詳細に報告することは、信頼関係の基礎となります。
定期的に試算表や資金繰り表を提出したり、事業計画書などを用いて経営状況について説明することで、金融機関の担当者に安心感を与えることができます。また、問題が発生した場合には、早期に報告し、解決策を協議する姿勢を示すことが大切です。そうした透明性を保つことで、信頼を築くことができます。
継続的なコミュニケーション
コミュニケーションを継続することも重要です。
金融機関との定期的なミーティングや連絡を怠らないことで、良好な関係を維持することができます。定期的にビジネスの進捗や計画の変更、業績の報告を行い、特に担当者とのコミュニケーションを密にすることが重要です。
さらに、金融機関との関係を築くためには、長期的な視点で考えることが重要です。一時的な利益を追求するのではなく、長期的かつ地域経済への影響までを視野に入れた関係構築を目指す方がいいでしょう。
実績を積み上げる
金融機関においては、最終的には「数字」がものを言います。例えば、
- 優良な財務諸表(特に貸借対照表)
- 長い期間、遅滞なく返済してきた実績
- 担当者との面談歴や提案歴
- 口座の利用履歴
といったものです。こうしたものは、一朝一夕にごまかせるものではありません。
こうした実績の積み上げにより、金融機関との信頼関係をさらに強固にすることができます。
6. 資金調達でもよろず支援拠点をご活用ください:金融機関紹介、資金繰り表作成など
本記事を通じて、借金が悪いことではなく、経営において重要な役割を果たすことを理解していただけたかと思います。
事業の成長や安定のために借入をご検討でも、色々と分からないことやご不安もあるかと思います。
よろず支援拠点では、そうしたお悩みにも丁寧に対応させていただきます。例えば、
- 政策公庫で借入するための申し込み資料がつくれない
- 信用金庫と銀行の違いが分からない
- いくら借入すればいいか分からない
といったことから、本格的なことまで、どんどんご相談ください。